触媒が特定の物質(基質)のみを選択して反応を進めるとき、薬剤が特定の生体分子のみに働きかけるとき、そして分子が結晶化するとき、これらの物質(分子)の間には、お互いを認識・識別する作用が働いています。このような分子間の相互作用は、化学反応や物質の性質・構造を方向付ける大きな要因のひとつです。
特徴的な分子間相互作用を示す官能基(アミノ基やカルボキシ基など)を持つ化合物では、相互作用が働く場所はそれら官能基に限定されていますが、表面が等しく酸素原子に覆われているポリ酸においては、すべての表面原子が周囲の分子と相互作用を持つことが出来ます。
われわれは、そのようなポリ酸を対象とすることによって、どのような環境にある原子が分子間相互作用を持つのか、また、分子間相互作用が起きる場所を制御することができるのか、などを明らかにすることができると考え、研究を進めています。
これまでに、X線回折による結晶構造解析を利用して、分子間相互作用を示す原子を特定するとともに、ポリ酸の結晶化に用いる対カチオンや溶媒を選択することによって、分子間相互作用の組み換えが起きることを明らかにしてきました。さらに、X線小角散乱や多核NMR(1Hや51V)による溶液中での状態分析を行い、分子間相互作用を利用して溶液中でのポリ酸の集合状態を制御できることを示しました。
研究成果の例