多くの人は有機物・無機物に対して「有機物は柔らかく、無機物は硬い」という印象を持っているのではないでしょうか。生体組織(有機物)や岩石(無機物)のように、我々が手に取ることができるサイズの物質に対しては、この感覚はおおむね正しいと言えるでしょう。
しかし、ナノメートルのサイズで物質を見てみると、全く異なる側面が見えてきます。有機化合物を構築する共有結合は、限られた結合距離・結合角のみを許す硬い結合であり、簡単に切断されることはありません。一方、無機化合物を構築する配位結合やイオン結合は、広い範囲の結合距離・結合角を許すうえに、溶液中で結合生成・解離を繰り返しています。すなわち、無機化合物もナノメートルの世界では非常に柔軟に動きまわっているのです。
われわれが研究対象とするポリ酸は、そのような柔軟な無機化合物の典型です。ポリ酸は5族や6族の遷移金属元素と酸素が主成分の、非常に簡単な組成の化合物ですが、周囲の条件がごくわずか変化するだけで、数十個から数千個の原子が集まって様々な構造の分子を作り、さらに集合状態を大きく変化させます。
このように、周囲の環境に敏感に応答する化合物を対象に用いることにより、pHや温度などの外部条件が化合物の生成・集合に与える影響を詳細に評価できると考え、我々はポリ酸の生成および自己集合の機構解明を目指しています。さらにその知見を適用して新たな機能を持ったポリ酸・ポリ酸の集合体を合成することにもチャレンジしています。詳細については研究紹介のページをご覧ください。
連絡先:
〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40
日本大学文理学部
本館7階07140号室
研究成果が論文誌の表紙を飾りました(クリックすると拡大図が表示されます)。
9月1日 夏休みが終了し研究室が再開しました